20211015

異動してから半期。10月に入ってから、異動した事をあれこれと考え、今日は契約書の書き方を他部署からして頂く。

給料は減給したがそれなりに色んなことを知ることができている。異動した後に転職会社を個人事業で行なっている人と相談した所、僕もそういう異動したかったといっており、半信半疑にそれで良いのではないのかと納得する様にしている。「保留」ということで、ひとまずいる。

通勤時に読んでいた保坂和志の『読書実録』が読み終わった。電車のホームで読みながら歩いてしまう経験を久々にした。昔、母親が当時の渋谷駅でホームと電車の間に何冊も本を落としてしまった経験を語ってくれた話を思い返してしまう。

いまの渋谷駅のホームは地下に埋まり、車両とホームの間には敷居、レールが敷かれ、車両の扉の手前に扉があるため、本を落とす経験はほとんどない。

読書にまつわる経験は、人それぞれ違いがあるにせよ、読後体験について考えさせられる本であったには違いない。筆者である保坂は本を詩人、吉増剛造に習い、筆写する中で自分の経験とこれまで読んだ本をつなぎ合わせる内容をこの本では綴っていた。

読んでいく中で、作家、メルヴィルの『バートルビー』を筆写する章に行き着いた。この本に登場してくる弁護士事務所に居座る寡黙で痩せた若者、バートルビーについて保坂が読んできた本や経験から書き記している章である。

バートルビーは公的文書を浄書し、他の代書人たちと読み合わせするように雇い主である弁護士が言いつけると

「せずにすめばありがたいのですが」

といって、読み合わせを拒む。そして、浄書の仕事さえも

「せずにすめばありがたいのですが」

と拒まれたという。生きているが死んでいる生き方をしているバートルビー。そんな人物を筆写を通して、また別に筆写していたジェイン・ボウルズの『ふたりの真面目な女性』において、生き方に迷う女性たちとパーティで親しくなり家に女性ふたりを連れて帰って一晩過ごした翌朝、ふたりを連れて帰ってきた頼りない若者に対する説教と重ねている。

そこでは、戦うことがわかっていない男性を卑下し、「汚れた水の中に住んでいる魚」になるなと伝えていた。保坂は読んだ当時、挫けそうな気持ちに鞭を打って社会に出ているのだから、戦えないヤツを許せなくなると思ったという。けれども、そうなのかとカフカを読んで、(1)社会に出ない、戦わない生き方のロールモデルがない(2)戦わないのは不安で戦っている方が安心である。と考えたという。

そこで、バートルビーに戻り、バートルビーの力はしない力。潜勢力ということを保坂は考えるという。

と読後に浸りつつ、高校の頃に出会った教員がヨハネの複音書の一節、「はじめに言葉があった」という言葉があるから高校に「ヨハネ」と話す風景を思い出した。その人がよく美味いと力説していたご飯にバターをのせ、醤油をかけて食べる食事も同時に思い出した。

米を冷凍用と含めて三合炊き、ご飯にバターをのせ、醤油をかけて食べた。

少し不健康な味がした。