20211231

 朝、4時に目覚まし時計じゃなく。友達からの電話で目覚めた。高校の頃の先輩に会っていると電話したら出てこなかった人だ。新宿で飲んでいるらしい。

「大晦日なのに飲んでるのね。」

「あー。大晦日か。」

「まあ。18時から紅白とか始まるからな。」

「あー。ガキつか今年やらないじゃん。もうプロレスのみかと思ったわ。」

「統一されすぎだろ。」

「ごめん。3丁目で飲んでたけど。これから移動しなきゃいけない。あの店知ってる?」

 和室に広がる新宿とのやり取りで気づけば6時とかそのくらいの時間になっていた。

 ところで、毎年、便所掃除やワックスがけをしているが、そうしたものを今年もするのだろうかと考えあぐねていた。今日しかないと思っている。これから温泉に行って。そこから掃除をして汚れて。汚れたまま寝て。翌日には東京に飛行機乗って帰るつもりだ。

 佐々木敦の『半睡』を昨日読み終えて。持ってきた数冊も読み終えたいなと思ったりしていた。

 

 この前いった本郷新記念美術館で開催している「高橋喜代史展」が面白かった。書道と漫画の接点を探る作家。一部を除き、ほぼ全て新作で構成されている。漫画家を目指していた高橋は、07年からオノマトペ(擬音語・擬態語)を作品のモチーフとしている。ただ高橋が用いる言葉は、言葉自体が内包する「伝達」だけを抽出して作品にしているようにみえる。

 展示室のフロアとフロアの間。踊り場に展示されている「GOOD NEWS」(2021)は、テレビやスマホからただ流され続ける何か良さげなニュースを皮肉に描き出している。壁面に「THAT'S GOOD NEWS」と表記されたネオンが掲げられ、そのそばに置かれたモニターから「THAT'S / GOOD / NEWS」といった音声、脈絡のない文字や写真(本郷新の公共彫刻)が音声のテンポに合わせて切り替わる。その音声が会場全体を轟かせながらも、隣のフロアにいくとバーベキューコンロに石炭を燃やし、それをカンヴァスに転がして絵を作ったりしている「BBQ STOVE」(2021)が展示している。

 ここから鑑賞者は何やらオノパトぺには身体から発生させられるのだよな。と考えさせられる。「ごろっ」と石炭が転がって、それでついた後が絵となっている。行為と絵とがつながっている。そのつながりを感じさせながらも向かいに「ザブーン」や「ドーン」といったオノマトペを彫刻にした作品や「WHY WHY WHY」を半立体にした絵画といった旧作が並んでいる。

 奥に進めば「人はみな それぞれの カンバンを せおう」といった看板が目に入る。ここからオノマトペではなく。ある種のメッセージを掲げた立て看板を道具にしたパフォーマンスが並んでいる。「言葉をせおう」(2021)ではその言葉を背負って歩き、「10万年をせおう」(2021)では軍事施設や核施設を保有している市役所前で黒いゴミ袋と共に「この袋を1年間、保有してください。1万円支払います。」と書かれたメッセージボードを高橋が持っている。ボードと使われたゴミ袋と共に展示された映像では、その風景と役所の人が「これ。作品ですか?」と尋ねる様子が捉えられている。それに対し高橋は「そうです。作品です。」と胸を張って応えている。

 その応答がオノマトペだったらと考えてしまう鑑賞者としての「私」がいた。