20230323

 木村拓哉、通称・キムタクが有名になったと言われるドラマ、ロング・バケーション、通称・ロンバケをみている。これだけ、キムタクが、踏んだり蹴ったり、振り回されるキャラクターとして演じたドラマがあるのかと思った。脚本を書いたのは、連続テレビ小説半分、青い。北川悦吏子であるためか、展開が早かった。キムタクは大学を卒業後、ヤマハ音楽教室で働いており、ピアニストを目指しながらバーテンの男(竹野内豊)と生活をしていた。男が引っ越しをしたそんな所に、婚約破棄をされた山口智子演じる、モデルの女性、葉山南が花嫁姿で来る。同棲している男の姉でもあった。その葉山とキムタクは同棲生活をするものとなっている。ドラマの演出としては、個人的な印象になるが、庵野彼氏彼女の事情にみえるシーンがあった。それは、葉山とモデル友達、小石川桃子(稲盛いずみ)の掛け合いのシーン。このテンポの良い掛け合いは、男性同士の背中を向けながら話す感覚とは異なる。ラブコメみたいなギミックだと思いつつ、よく考えるとこみなと商事などのBLドラマも、こんな掛け合いがあったかもしれない。そのBLにもあるテンポの良い掛け合いは、ロンバケであれば女性目線の女性像なのか、女性目線の女性性のある男性?なのか。漫才なのにコントを初めてみたりするお笑いなど、会話特有の文法、といってもいいのかもしれない。そんな話をつらつら思い出したりしていた。この日から別日に、友人がススメてくれたバラエティ番組、にけつッ!!を例に出せば、男性同士の会話にある恥ずかしさを含んだ会話というのを、テンポの良い掛け合いとは対照的に考えたりする。にけつッ!!は、ケンコバ千原ジュニアによる掛け合いのショーなのだが、会話を減らしつつ、且つ、ダラダラと話す。そのダラダラしつつも、時間通りに正して話す。松紳と同じ系譜だというが、ある種の男性性を抱えた話術にもみえる。それと比べると、ドラマやアニメに溢れた女性同士の掛け合いは、本当にあるのかはさておき、あれはなんだろう。他方で、バカリズムの脚本は、女性にもダラダラしたコミュニケーションがあると見せている。それはさておき、ロンバケの話に戻せば、キムタクがその女性友達にまきこまれて、踏んだり蹴ったりされるのだけども、それでも「ちょ待てよ」といったツッパリ?が発動しないのは、キムタク創成期だからなのかもしれない。そこから、ギャル男の象徴とされるキムタクが現れ、ある種のマッチョな男性像とは別の男性像を作るからだろう。それは、男性の恥じらいを込めたツッパリ?にも現れているのではないだろうか。そうした恥じらいのあるコミュニケーションは、今ではどうなのだろう。話を広げれば、コミュ力偏上主義によって、男性/女性という性差をなくし、「コミュ力」というフラットな偏差値によって見える化しているかもしれない。となると、ダラダラしたコミュニケーションも、テンポの良い掛け合いも、恥じらいのある会話も、それぞれの偏差値があってもいいのではないか。形式化はフラットにさせるが、個別の差異には、気付けなくさせる。無化するのではない方法を、昔のトレンディドラマから見出すのが、可能だとすれば、配信がもたらす、復刻版トレンディドラマも成功していると言える。