20220206

 映画「三度目の、正直。」を渋谷のシアター、イメージフォーラムでみた。神戸の話。野原位による演出、監督。いつも濱口作品の脚本を書いているイメージだが、今回は監督をやっている。子供のいる家族。ラッパーとラッパーの妻が深夜にドライブしているとき、ラッパーが「おれは、お前の事、好きだよ。」と言っているのに対し、相手が「分からない。あなた。だれですか?わたしはだれ?」と反応しているシーンが印象に残っている。妻は産後、うつ状態に近く、けれどもラッパーの人を信用している。あるとき、その人の妻の母親が再婚し、再婚相手から、好きだと告白される。それで告白した相手がラッパーのライブに来て、騒動が起こる。その入り乱れた関係と。自己同一性の問題が一緒くたになっている所が気になっている。

 誰でもない私について、どう演じているのだろう。誰でもないはずなのに、誰かの、或いは、どこかに属して安心してしまっている。けれども、本当は「ここではない、どこか。」に身を投じて生きてきたのではないのだろうか。という疑念がその人の意識を駆け巡っている様に思えた。「あなたの所有物ですか?私は?」という元からあったであろう事柄を突き崩す映画だった。