20220619

 自転車で東京都現代美術館東京ワンダーサイト、四谷のレジデンススタジオに行った。

 とても空が高い気もさせ、これが晴天かー、昨日、洗濯物を干してしまったからなー、と呆然と角部屋のベランダに立ち、空を眺めていた。新日曜美術館がミロ特集になっており、ヘミングウェイが購入したとされる木の絵について、以前「美の巨人たち」で放映されていたことを思い出す。
 「美の巨人たち」はいくつか録画した番組をDVDに焼いて持っている。本も刊行されており、その本を何故か美術が好きだからと全寮制の頃に先輩から二冊もらった。小林薫の重たい話し方がその時代の「美の巨人たち」だった。認知症の祖父がロイ・リキテンシュタインの「赤いヘアリボンの女」の回で何度もリフレインしていたらしく、何度も「ロイ、リキテン、シュタイン、赤い、ヘアリボンの、女」とマッサージチェアに座りながら楽しそうに暗唱していた。祖父にとって、作品名と作家の名前の語呂が良かったのかもしれない。
 この作品は東京都現代美術館が95年の開館当時、6億円で落札した。現在は十数億円もの価値になっているらしいが、購入されたときは現代美術に何故、ここまでお金をかけるのかという疑問が飛び交った。そして、平成の巨大ゴミ処理場といった名前でこの館は知られることとなる。
 その館で開催された「藤井光、山城知佳子」「吉阪隆正」をみた。吉阪展は展示の施工がとても工夫を凝らしており、順路の縛りを規定していない所が醍醐味に感じられた。吉阪隆正の建築作品は大学棟以外はあまり良く知らなかった。登山や日本計画には突飛な思考の持ち主であると感じられたが、常に集団でプロジェクトを執行するという方法を意識している動きがユニークに感じられた。
 3階の藤井光の展示は緊張しながら入った。ハンス・ハーケの作品にみえた。ヴェネチアで展示されたゲルマニアの展示など、表象不可能性に迫るという試みをこの人は何度も同じ館で行っている。「キセイノセイキ展」においてもその表象不可能性に迫るため、東京大空襲資料館(まだ計画されつつも頓挫してしまう)の資料を展示する計画を打ち出すも展示できないため、何もない展示室が作られる事を行っていた。今回は戦争画を持ってこようとするも展示できないため額縁だけになっている。
 山城知佳子の展示室では「肉屋の女」を3チャンネルで鑑賞することができて良かった。ひとつの画面ではみたことがあるものの、3チャンネルではなかった。迫力のある表現となっており、肉屋の女が男たちに食われる?描写で女性陣ふたりが展示室を後にしていた。順路で帰りのエレベーター付近の椅子に向き合って座り、解説シートを熱心に読んでいる。ホッとした顔つきで、こういった意味があったのねと話し合っていた。コロナ禍以後、展示室で会話をみるのは久しい。
 吉坂展では英語の通訳をしながら解説する3人の人がいた。1人の女声は少し声の音量がおおきくも、男女ふたりとも英語をはなせた。もうひとりは学者の様な趣の外国人であった。
 コレクション展はこの前にみたので、そこから自転車で東京ワンダーサイト本郷に向かう。疲れていたためか、2階の展示室でスマホをいじってしまう。3階の陶器の作品が1階と2階の展示と異なり、軽やかだった印象が残る。1階の植木を写真で捉えた作品も気になった。
 そこから四谷にいき、知り合いの画家の展示をみる。1階で展示していた人の作品がバラエティのあるものとなっており、水晶を描こうとしたのですか?と聞くと「木」と答えていた。