20231103

 「最近、絵とかなくてもいいよな。と思う」

 こんなメモがあった。家でみるホックニーとか「絵をみている」になるのかな。展示室にならべられた絵を絵としてみる経験を美化する人より、退屈そうに展示室につれられた人とかの話の方があったりする。

 午後から文学フリマの同人誌の発送作業があったため、午前中にどこか行くかと思う。虎ノ門ヒルズ駅の建築が面白そうだったので、虎ノ門ヒルズ駅まで向かった。駅に着いてホームの下に改札があるため下のフロアに階段を降りてゆく。下のフロアは空港みたいな作りになっていた。改札口を抜けて、吹き抜けの空間が目にとびこんでくる。

 なにもかも反射される素材によって空間の奥行が無限にひろがっていた。これがレム・コールハースの事務所で働いた建築家による設計なのかと思った。例えば、エスカレーターのつらなりが反射する素材によって一本の線になっている様にみえる。改札を抜けた所の天井高から地下2階から2階くらいまでの4フロア分の天井高に向かう動線は、建築に取り囲まれた人の感覚をにぶらせていた。それと、新車の匂いがした。

 虎ノ門ヒルズから建設途中の麻布台ヒルズに向かう。網目の襞が波打っていた。イメージ画像は度々みていたが、骨組みは人工的な素材かと思っていた。けれどもよくみると石材になっている。へザウィック・スタジオによるこの設計は、アーバン・ゴシックといった所だろうか。そんな造語が頭の中をよぎった。

 珈琲店でお茶をした。隣に女性ふたりが座る。関西弁のふたりで観光地にきたみたいな会話をしていた。渋谷の放送博物館でアナウンサーの体験でもするかとか、世の中ブスかそうじゃないかしかいない。みたいな話をケラケラしており、飲んでいた黒糖珈琲が吹き出しそうになる。

 神谷町からお茶の水まで電車で向かう。向かいがてら最近みたジョン・ウィック:コンセクエンスについて考える。あの映画は建築映画なんじゃないかと。冒頭から新国立美術館が登場し、途中から出てくるフランク・ゲーリーの建築などを大画面のスクリーンでみる。そのスケール感に圧倒されるとは。