20220103

 角川武蔵野ミュージアムに友人と訪れた。俵万智の展示をみたかったからだ。俵万智は「今日はサラダ記念日」で一躍お茶の間の人となった歌人である。短歌を作っている人というイメージがある。角川系列の賞を受賞し、その記念として行われていた。


 友人はコピーライターで俳句も作っていたという。そのため、字余りをうまく操作しながら歌を作っていると指摘していた。僕は歌から感じる他者の声を聴いている感覚が気になっていた。決してそれらの歌をみて、詠んでいる人に対して書かれた内容ではないからだ。どうやら短歌の世界においても誰かの声を意図的に作り出す。操作する。という作為性について議論が展開されたりしたという。

 それはともかく、展示のないように触れよう。主に初期作(サラダ記念日、手紙)と近作(SNSについてや原発といった社会的なテーマをモチーフとしたもの)に分かれていた。その間に年表があるといった展示構成。トラフ設計事務所による緩やか且つ、軽やかな什器によって順路があるようでない展示空間が作られていた。

 僕は初期作のサラダ記念日発表当時の反応、週刊誌や新聞の四コマ漫画などの切り抜きが展示されたコーナーが面白かった。俵万智はデビュー当時、高校の国語教員でもあった。そのため、ヤンキーと俵がツーショットしている写真や授業をしている風景が撮影されたものも展示されている。そして、「女性」としての表象のされ方が「まちちゃん」というあだ名と共に様々な描かれ方をされており、それを許容し、作品に内包している所もそのときそのときを柔軟に取り入れる軽やかさに見て取れた。サザンオールスターズの桑田の曲を聴きながら...という一節のうたもそう感じさせた。

 1階のコロナ以降のアマビエも面白かった。大小島さんの絵画はスケールが広い。そして、床にも文字が貼られており、通常の美術館にはあまりない光景がそこにはあった。どこかテーマパークっぽい。娯楽と美術の接点を編み出そうとしている所を感じる。他にも外に鴻池による動物の皮に描かれた絵画も見応えがあった。

 どうしてもテーマパークなどの一種の娯楽施設には、快楽が付きまとうがその快楽をどう社会通念上のものとするのか。そこに問題意識を膨らませてみたいと考えさせられた。